ベトナム経済の成長やダイナミックな市場の動きが注目される一方で、日々のビジネスの現場では、中小企業(SME)を取り巻く環境が急速に厳しさを増しています。
直近の報道でも伝えられている通り、足元では市場から姿を消す企業が後を絶ちません。今回は、ベトナムで事業を展開する中小企業が直面している現実と、そこから見えてくる今後のビジネスの行方について考えてみたいと思います。
半年で15万社超が退場。「四面楚歌(Tứ bề sức ép)」のベトナム市場で何が起きている?
経済メディア(CafeFなど)の報道によると、近年のベトナム市場では、年初からの半年間で15万社を超える企業が市場からの撤退や休業を余儀なくされています。参照
活気があるはずのベトナム市場で、なぜこれほど多くの企業が苦境に立たされているのでしょうか。その背景には、単なる景気の波だけでなく、「コストの急増」と「ルールの厳格化」という、中小企業(SME)にとって重い負担がのしかかっている現実があります。
固定費カットの重要性:弊社が昨年からオフィス移転・見直しに動いた理由
こうした外部環境の荒波を乗り切るため、企業がまず着手すべきなのは「固定費の最適化」にほかにありません。
実は弊社(Fuga Solutions)自身も、こうした市場の変化やリスクを先読みし、昨年からオフィスの移転やスリム化といった固定費の見直しにいち早く動いてきました。変化の激しいベトナム市場において、余分なコストを削ぎ落とし、いつでも身動きが取れる「身軽な体制(リーンな経営)」を作っておくこと。それが、今の時代を生き抜くための防衛策としていかに重要であるかを、身をもって実感しています。
採用現場とコンプライアンスの大きな変化(社会保険料と「基本給・手当て」のリアル)
コスト増大の波は、オフィスの維持費だけに留まりません。特に経営者の頭を悩ませているのが、コンプライアンスの厳格化と労務環境の変化です。
近年、当局による社会保険料の徴収管理はかつてないほど徹底されており、これまでの「曖昧な運用」が通用しなくなっています。それに伴い、ベトナム人求職者側の意識も劇的に変わりました。
最近の採用面接の場では、候補者が「社会保険の支払い額」や「基本給と手当ての比率」を非常にシビアにチェックしています。親しい会計コンサルタントの友人たちと話していても、「この手の労務・税務に関する相談件数が以前より明らかに増えている」という声を本当によく耳にします。コンプライアンスを守るためのコストや手間は、確実に右肩上がりに高まっているのです。
政府の減税措置という救済。だが「コンプライアンスコスト」は確実に上昇中
こうした中小企業の苦境に対し、政府側も救済の手を差し伸べています。直近では、一定の条件を満たす小規模企業や個人事業者を対象に、法人税(TNDN)の減額措置といった支援策も打ち出されています。
しかし、税制上の優遇措置があったとしても、日々の営業活動や管理業務において企業が負担しなければならない「コンプライアンスコスト」の総額は、以前とは比較にならないほど膨らんでいます。ルールに則って正しく経営しようとすればするほど、バックオフィスの負担とコストは重くのしかかるのが実情です。
まとめ:コスト増大の先にやってくる「AIシフト」と雇用の未来
人件費の高騰、社会保険料の負担増、そして厳格化するコンプライアンス。これだけ企業の管理コストやリスクが増大していくと、経営者として「人を新たに採用し、組織を拡大すること」に対して、以前よりも圧倒的に慎重にならざるを得ません。
【個人的な見解】 このコスト増大のトレンドがこのまま進んだ先にあるのは、企業が「人の雇用」をさらに見直し、バックオフィスや定型業務の領域において「AIへの強烈な置き換え(AIシフト)」を急ピッチで進める未来ではないでしょうか。
コスト高の波やルールの厳格化が、皮肉にも人間の仕事のあり方を変え、中長期的な失業率の増加や雇用のミスマッチといった新たな社会課題を引き起こす引き金になるかもしれない——。そんな大きなパラダイムシフトの予感を、日々の経営現場からひしひしと感じています。
変化の激しいベトナムで生き残るために、私たち企業はどのような選択をすべきか。効率化とデジタル化の波は、いよいよ待ったなしの局面に来ています。
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